森禮子さんは1980年『モッキングバードのいる町』で第82回芥川賞を受賞した作家です。
「キリシタン海の道紀行」は森禮子さんが御年80才の2008年1月に発行されました。
「十六、七世紀のキリシタン時代に、馬渡島にも何人かの信徒がいたのではないか」を確認する目的で訪れていますが、準備不足もあって必ずしも初期の目的を達成してはいないように思われます。
あくまで、「紀行」なのでしょうが、「馬渡島キリシタンの歩み」や北嶋磯舟氏の「謎の馬渡島」などを周知していたのでしょうか。
とはいえ、さすが作家だと感じたカ所は
「思いめぐらしていると、いきなり天主堂の前に出た。
不意に、小さな別世界が現れた感じだった。
右側は中央に聖母像が立つ明るい小庭園、左側は整然とした墓地。その間の白い径の奥に、雲一つない青空を背景にしたロマネスク風の丸屋根の塔を持つ、純白の可愛い天主堂が清雅に佇んでいた。
人影も物音もなく、陽光ばかりが漲っている。」の部分でした。